酒田の老舗経営者と若手起業家の対談 テーマ「食」

酒田の老舗経営者、株式会社 平田牧場 新田嘉一会長と若手起業家である花鳥風月 代表取締役 佐藤勇太さんの対談が、寄暢亭(きちょうてい)にて執り行われました。

酒田市産業振興まちづくりセンターが設立されて、もうすぐ1年になります。酒田の産業・経済が活発になることを目的とし、企業同士のマッチング事業や販路拡大に向けた支援など、多方面に向けて事業を進めています。その中に「酒田市内の老舗企業と若手起業家をつなぐ」という大きな目的があります。これまで酒田の経済界をリードされてきた創業者と、若手経営者との交流を、対談という形で実現させた記念すべき第一回目が、新田嘉一会長と佐藤勇太さんです。

今回、新田会長のご厚意により、酒田市が誇る庭園『寄暢亭(きちょうてい)』(別名『風を観る庭』)にて対談が実現しました。

司会進行はチアーズ 代表取締役 加藤明子さんです。

対談

加藤明子さん(以下加藤):本日は、めったに足を踏み入れることができない寄暢亭を会場に貸していただき、誠にありがとうございます。さて、この度の対談に先立ちまして、まずは自己紹介がてら佐藤勇太さんの今までの経歴やラーメン屋さん創業に至ったきっかけをお話しいただけますか。

 

佐藤勇太さん(以下佐藤):初めまして、花鳥風月代表の佐藤と申します。この度はこのような対談を設けていただきましてありがとうございます。現在36歳です。24歳の時にラーメン屋を開業しまして今年で13年目になります。県内に4店舗、福岡空港に1店舗、酒田ラーメン店を経営しております。

酒田ラーメンの老舗「満月」の先代からお誘いを受け、その時から酒田ラーメン作りに没頭しました。酒田ラーメンを酒田一愛している男だと自負しています。また、酒田のラーメンに誇りを持って、酒田ラーメンを通じて地域を盛り上げたいと思っております。

 

加藤:仕事に誇りを持っている男性、世代年代は違えども共通する部分は数多くあると思います。

花鳥風月の佐藤勇太さんは「満月」さんとの出会いから、16年間ラーメンに携わり、福岡空港にまで出店するという素晴らしい成長を遂げていらっしゃいます。

ここで改めて、新田会長の起業した当初のことをお話しいただけますか?

 

新田嘉一会長(以下会長):好きでなければここまで続けられません。好きな職業を続ける、これが成功する人の秘訣だと思っています。自分は畜産が好きだった。そして、世界中の畜産を勉強しました。今から50年前にオランダに行き、約1ヶ月間勉強をしたこともあります。好きでなければ、仕事にも勉強にも身が入りません。人生をかけてもいいと思える、好きなことを見つけることが大切。

 

加藤:勇太さんの場合は満月さんの師匠である目標となる人がいましたが、会長の場合は目標となる人はいましたか?

 

会長:全然いなかった。私は世界中、人でかけ回りました。しかもその時は日本円には価値がほとんどなく、なんでも自分でやりました。

 

加藤:会長の世界をかけ回ったという話を聞いて、勇太さんはどう思いますか?

 

佐藤:あの時代に世界に出て挑戦する会長のスタイルに、ものすごいエネルギーを感じます。私は真似できないと思います。

 

会長:あの時は日本にはなにもなかった時代でした。今はいろいろなものがあります。ただ、人が少ない。酒田だけで商売は成り立たない。しかし、この酒田ほど産地として良い所はないと思います。気候はいい、食べ物もいい。ただ、冬場3ヶ月は厳しいが、これだけ我慢すればこれほど良い所はないと思っています。自然もあるし、人情もある。

世界中を見てきた私の知り合いもそう言っていました。今の日本の円には価値があり、恵まれている。しかし、人情はお金には換えられないから、ここ庄内は素晴らしい所です。

 

加藤:これから世界へ進出を考えている佐藤さんは具体的にどんなことを考えていっらっしゃいますか?

 

佐藤:2年前に一度ニューヨークで酒田のラーメンを振る舞ったことがあります。そして、酒田ラーメンを日本一のご当地ラーメンにすることを目指し、酒田を活気づける事が目標です。また、5年以内には酒田のラーメン、酒田のふわとろワンタン麺を世界に進出させたいと思っています。会長が世界に飛び出した時代とは違い、さまざまな面で整備されています。新しい情報もすぐに入ってきます。会長のときほどリスクはありません。会長のようなエネルギーがあったらどこへでも行けるし、何でもできると思います。

ラーメン未開拓地を開拓しに行く事と豚骨ラーメンはあるけれど、醤油ラーメンがない所を、多少のリスクを覚悟し開拓する事、そして酒田のふわとろワンタン麺を根付かせたいと思っています。

 

加藤:勇太さんは酒田のラーメンで酒田に貢献しようと考えていらっしゃいますが、会長は豚肉で、豚で酒田に貢献しようと思ったのですか、それともその存在で貢献しようと思ったのですか?

 

会長:自分の前に、酒田の発展には諸先輩の貢献(庄内空港、エプソン)が大きかった。インフラ整備、雇用の確保が酒田の大きな転機となったのは間違いないのです。あの方たちがいなければ、酒田、庄内には誰も来なかったと思います。神様のような存在だと思っています。

周りの方々は私が酒田の発展に貢献したように言ってくれているが、自分ではあまり意識したことがないのです。ただ、一生懸命仕事をしていたら、それが酒田の発展につながった用です。

 

佐藤:酒田のラーメンも90年という歴史が有り、先代から受け継いだもので商売しています。これが、さらに50年後100年後と続くために、私たちが何をするべきかを常々考えています。

そのためには、エプソンさんや平田牧場さんのように100億以上の企業にならなければならないのかをお伺いしたいです。

 

会長:あまり大きなお金だと銀行は渋い顔をするが、逆に銀行を困らせてやるぞ!というくらいの気持ちで、たくさんお金を借りなさい(笑)そのくらいの度胸を持って事業をしなければならないと思います。

たくさん借りて、投資して、雇用して増やしていけばいいのです。

 

加藤:平田牧場がこれほどの大きい企業になったターニングポイントは何だとお考えですか?

 

会長:地元だけでは商売にならなかった。東京に進出をして、東京で認められるよう努力をしました。庄内は作業場として、そこから東京に持って行くという発想にしたのがそうかもしれません。

 

加藤:私も東京で平田牧場の看板を見ると、誇らしく、うれしく思います。

勇太さんも、同じようにこれから、日本全国に、世界に展開し、酒田をPRしたいという気持ちをお持ちですよね。

 

佐藤:はい。「どうせ食べるなら地元へ」と思ってもらえるように、東京でのイベントなどで出店をし、酒田にラーメンを食べに行こうと思ってもらうきっかけをつくる活動をしています。それを続けていけば、酒田に還元できると思ってやっています。

今はまだ、微々たる力にしかなっていませんが、これから拡大して、食を通じて地域に貢献できることがあるのではないかと思っていますが、新田会長はどう思われますか?

 

会長:そのためにはたくさんの雇用をする必要があります。また、日本に流通できる商品を作ることと信用も大切です。雇用・信用を得て継続してください。口で言うのは簡単だが、夢を大きく持って、型にはまらず、人生面白く、そういう発想をもって生きてください。また、体力も大事です。自分の夢を自分で叶えるのが人生というものです。

 

加藤:会長は働いただけ、努力しただけ結果となっていますが、がむしゃらに働いていたとき、息抜きのためのに娯楽には何をしていらっしゃいましたか?

 

会長:毎日友達や仕事仲間とお酒、ウイスキーを飲んで親睦を図っていました。飲んではいたけど、どこに行ってもその分たくさん働いていました。

 

加藤:勇太さんも酒田以外の所でご商売をされて、酒田の気質や傾向が他と違うと感じますか?

 

佐藤:気質も、味の傾向も違うと思うときがまりますが、地域の隔たりというものは全く感じません。

 

加藤:新田会長も昔から「地域の隔たりはまったくもってナンセンスだ!」とおっしゃっていました。

 

会長:中国は半世紀くらいでアメリカと対等に渡り歩けるまでに成長しました。日本も若い力で良い方向に変えていって欲しい。

 

佐藤:変えなきゃいけないと感じてはいますが、今はまだ個々でがんばっていて自分のことで精一杯です。個々が一体化して地域を盛り上げていけば良いとは思っていますが、やり方がわかりません。酒田に貢献したい気持ちは強く持っていますが、自分のやり方で良いのか、もっと効率の良いやり方はないのか、リスクを負ってまで新しいコトをやらなければならないのかなど、非常に悩んでいます。

 

会長:悩んだ方がいいのです。100パーセント成功するのはあり得ません。悩んでそこから学んでやって行くしかないと思います。

 

佐藤:会長と私とでは悩み方のレベルが違うのですが、どう貫けば良いですか?

 

会長:プライドを維持してください。

 

加藤:プライド貫くというのはとても大変なことです。トップとしてグループを納める資質として、何が一番大切だと思われますか?

 

会長:「自分」です。先祖があって今の自分があります。信念は受け継がれていると思います。

 

加藤:会長のその信念が若い頃から揺るがずにいるところが素晴らしいと思います。

 

佐藤:会長にお伺いします。経営者としてのお金の価値をどうお考えですか?

 

会長:お金は「武器」です。「武器」がなければ戦えません。

 

加藤:何と戦うための「武器」ですか?

 

会長:人間です。どんな人間だってお金という「武器」で解決できます。

 

加藤:「武器」で勝ち取ったものを、会長は地域に還元しているのですね。

 

会長:みんな、そう言ってくれるが、自分ではわかっていない。わからないが、自然な形でそうなっているのだと思います。

 

佐藤:庄内空港やリサイクルポートなどは、私が生まれたときから有り、当たり前に存在している施設に新田会長が関わっているのを初めて知りました。これをもっとみんなにお伝えしなければならないと思います。新田会長のような先輩たちのおかげで、我々は商売をしているのだと知ったうえで、もっと仕事に打ち込むことが酒田のためになるのだと思いました。

 

加藤:本当にその通りですね。酒田が更に発展してゆくためには、どんなことが大事なのでしょうか?

 

会長:インフラの整備だと思う。それを整えれば、酒田ももっと明るい希望がでてくる。

 

加藤:若い起業家のために発破をかける言葉はありますか。

 

会長:リーダーがひっぱっていかないかなければならない。

 

加藤:今までの新田会長の話をうかがって、勇太さんは会長のどのようなところにあこがれを感じますか?

 

佐藤:新田会長のポリシーやプライド。マイナスをゼロやイチにしてゆくパワーやエネルギーがとても魅力的だと感じました。

 

佐藤:会長のお話を伺って、プライドや誇りの持ち方によって企業が成長していくのだとわかりました。経営者として成長してゆくうえで、これは気をつけた方が良い!と言うことを教えていただけますか?

 

会長:それは人間でしょう!だから、「人を見る目」を養いなさい。それが一番大事です。人間ほど、お金に敏感な動物はいません。私はお金持ちになろうと思ったことはありません。仕事をがんばった結果今があるだけなのです。だからこそ、お金の力がよくわかっているつもりです。

信念を持つこと、挫折しないこと、人間にはお金が必要なこと、これらが力になります。

 

佐藤:会社を大きくするためには「人」が重要ですが、私はスタッフと仕事や夢を共有することで、楽しみを覚えてもらおうと工夫をしていますが、会長の「人を育てる」術を教えてください。

 

会長:次にいう3つを肝に銘じてください。

「どんな逆境も乗り越えていけ」「人間社会は競争社会、それに負けない心を持ちなさい」「本を読みなさい」この3つを守れば必ず人生は幸せになります。

佐藤さん、ラーメンで世界を制覇してください。あなたならできる。

 

佐藤:新田会長の今の言葉を裏切らないようにがんばっていきたいと思います。

 

加藤:会長からありがたいお言葉をいただきました。佐藤さんに、次世代の約束をしていただきたいと思います。

 

佐藤:酒田ラーメンが今後、ご当地ラーメンとして日本全国に、世界に羽ばたけるように努力していきたいと思います。

本日はありがとうございました。

 

会長:がんばってください。ありがとうございました。

 

加藤:素晴らしいお話をありがとうございました。

 

まとめ

何もない時代を生き抜き、ここまでの大企業に成長させた新田嘉一会長のお話はとても重みのあるものでした。経験なさったことを全て糧にし、努力を惜しまず働いただけの結果が今ここにあります。新田会長の仕事に対するお考えは会長の口から発せられるからこそ価値があるものとして私たちの心に響きました。

 

若手経営者の声

アパレルショップFUN★K 店長 佐野 圭さん http://fun-k.jp/

ずっと一番お目にかかりたかった新田会長のお話を聞くことができて光栄に思います。仕事は、好きなことを続けなさいというシンプルなお考えでとてもわかりやすかったです。迷いがあったのですが、全部吹っ切れました!今回、参加してとても良かったです。ありがとうございました。

 

若手経営者 Yさん

我々にとって新田会長は雲の上の存在の人です。今回、改めて新田会長の等身大のお話をうかがってとても親しみを持つことができました。酒田には佐藤さんのような若い世代でがんばっている方々がいると知ったこともたいへん刺激になりました。ありがとうございました。